パニックに陥りかける令嬢は頭を切り替え、術攻撃を繰り出そうとしたが、ゴブリンの方が一足早くに石を投げつけ、あっさり顔面にクリーンヒットしてしまう。

あえなく鼻血を噴き出した令嬢に反撃の時は訪れず、顔を上げるとゴブリンが一斉に襲いかかってきた。
強かにぶつけられた顔の痛みに意識がいかないほどの恐怖。
後悔、屈辱、新たに加えられる痛み…
令嬢は闇の奥に引きずり込まれた。
一体どれだけの時が経ったのか、目を覚まして令嬢は生きていることを知った。
清潔な服を着せられ、暖炉に火がくべられた暖かい部屋で介抱されていた。
なぜここにいるのか察した令嬢は、炎で陰影が濃くなった鎧づくめのゴブリンスレイヤーがいるのに気づき、訊くともなく一言ゴブリンと口にした。
だから彼は、その通りだと返した。

46話
令嬢は見たものが単なる悪夢だと思いたかったのか、仲間たちがどうなったのか訊ねたが、彼は簡潔に死んだと答えるので、静かに受け入れた。
彼は逆に攻略のためにいくつかの質問を返し、令嬢は言われた通りに分かる範囲で答えていった。
そして、兵糧攻めをしたこと、うまくいくと思ったことを搾り出した。
彼は正直にうまくいくこともあるだろうと答え、話を切り上げようとしたが、その時、令嬢は仲間たちと聴いた歌を思い出し、ゴブリンスレイヤーなのか確かめた。

彼はそれも簡潔に、そう呼ばれていると答えた。
彼が部屋から出ていくと、令嬢は鞄の中を検め、残されているナイフを握りしめ、憎しみを募らせた。
彼に助けられたことは、令嬢にとって不幸中の幸いだった。

彼が戻ってくるとエルフは令嬢の様子を気にするが、彼は相変わらずの素っ気なさで精神的に大丈夫なのか他人が分かるはずもないとにべもなく答えた。
エルフもエルフで、自分の怪我の具合を気にされると顔を綻ばせた。
補給についてはリザードマンが食糧を、ドワーフが薬師の娘から薬草を分けてもらい、ありがたく調達できていた。

令嬢を助けて目下の依頼はこなしたが、あの洞窟がゴブリンの居住区として使われていなかった以上、本拠地を叩くのが次なる目的だった。



































