荘厳な大聖堂、恭しく祝詞を語る司祭。
一人で前に出て清々しい顔をしたガビアルは胸に手を当て、これから襲いかかってくるだろう誘惑を退ける誓いを立てた。
席に着くのはアルゲスを始め、泣き虫や未亡人、そして皇太子夫妻。
ちょこんとその他大勢の中に埋もれているアルクは、アウレリアの冷めて澄ました横顔を見ると、自分への愛が消えてしまったのではないかと不安がこみ上げた。

儀式は粛々と進み、額に何かを塗りたくられたガビアルはそれで祝福を受けたことになり、聖霊の祝福を、を合言葉に銘々が唱和し、アルクも小さな声で仕方なくつぶやいた。
その時アルクは、神官の一人が珍しく女であることに気づき、目を隠すマスクから盲目なのかと思うのであった。

ワイワイガヤガヤそここで笑い声が起きている、晴れやかな成人式。
アルクがアウレリアたちの様子を遠巻きに眺めているのに対し、ジョアンナはご馳走をここぞとばかりに頬張って幸せを感じていた。
さすがイスティシアの領主だと褒めちぎるのも、ガビアルがアルクに負けず劣らずのイケメンで玉の輿もやぶさかじゃないと思えるからだが、セリーヌのタイプではない。

アルクは二人に合流すると、まずティアの様子を訊ねた。
ティアは辱めを受けただけで身体的外傷はないらしく、簡単な回復魔法を受けて今はゆっくり眠っていて、一緒に捕まった騎士ネーゲリが今は傍についていた。
そう聞いて一安心したアルクは、いざ気合を入れて皇太子に接触することにした。
アルゲスたちとのトークに割って入ったアルクは、恭しく頭を下げて初めましてと礼節を重んじて切り出した。
アウレリアたちがシーンとする中、構わず自己紹介を繰り出すが、ドゥティアス皇太子はチラ見するだけで一切応答せずにアルゲスとの会話に戻った。

何かを感じ取ったのか、格の違いで喋る気にもなれないのか。
勢いを削がれたがこんなすぐに退散できないアルクは続けて、矛先をアウレリアにチェンジして話しかけた。
その顔はもう、久しぶりに話せる嬉しさに満ち満ちていて、それは彼女も同じくぶわっと喜びがこみ上げているのが見て取れた。

しかし返事は伏し目がちに元気がなく、どうでもいいような近況について話題を広げていくだけ。
心の中で愛しい人の名前を連呼しているアルクは、もっと他に話したい伝えたいことがあるのを我慢していたが、外面を繕わなければならない状況が歯痒く、悔しさが拳に現れてしまう。
アルクの本心を知っているガビアルは悔しさを隠しているのが楽しくて堪らず、イジってやりたくなるとすぐさま皇太子に面白い話があると言い出し、このアルクはかつて、姉に懸想していたのだと暴露した。




































