247話
紗月は渚が生んだ子であり、海外で父親が拾った云々は全て改竄された記憶だった。

衝撃の出自が暴露された直後、景色が元の現実に戻ったが、遠くに光が見えるのでまだ記憶の続きは続くようだが、まずは信が無事なままでいてくれた。
ただ信も他の隊員も催眠状態のように無反応で眠り続けていて、まだ主要メンバーと絡ませてはもらえないようだった。
晴輝がまず紗月を気遣おうとすると知ってたかどうか訊かれたので、薄々は感付いていてさっき顔を見た時に確信に変わったと素直に答えた。
そして神妙な表情のままの紗月に、聴き心地の良い言葉を並べ立てて励まそうとした。

しかし本心か強がりか、笑い飛ばした紗月は気にしてないと返し、諸々の感情を理解している今の自分なら大丈夫で、逆に渚がしたことで彼が罪悪感を感じる必要はないのだと励まし返した。
それでも彼が割り切れるほど強くないと言うので、弱いなら私が守ってあげると、現代のジャンヌダルクらしい頼もしい笑顔を見せた。

幼なじみとして育った実の兄妹は、心が遥かに成長した妹の懐の深さで上手くやっていけそうだった。
紗月の気持ちが問題ないことが分かって、いよいよ次の情報エネルギーの光に彼が触れると、今度は爽やかな風が吹く草っぱらに飛んだ。
天宮家と五月雨家が仲良くピクニックしているところで、一枚のシーツに弁当を広げ、二家族で楽しんでいる。
まだ赤ん坊の香里を抱きながら、渚は母が笑った時の気持ちに思いを馳せた。
そして当時の母と同い年になった渚はやっと笑顔の意味を理解して涙を零し、妻として母として平凡な人として幸せになろうと思った。

しかし未曽有の大災害がその決意を変えてしまったのだった。
また場所が街中に戻ったが今度は暗い時間帯で街に灯りはなく、人々がぞろぞろ列をなして歩いている。
この日は津波が起きた後の最初の朝、仙台市内から郊外の我が家に帰ろうとする人々の列だと、当時、父を亡くしたばかりの紗月はすぐ察した。
そんな紗月を慰めるために抱きしめた渚は、人の死とはどういうことか正確に理解していたが、それはあくまで理論上の話に過ぎないとこの災害で思い知ったのだ。
それが死を無くすと決めたきっかけだった。

再び科学の道を切り開き始めた渚は持ち前の天才っぷりで死の克服を達成できる境地に達したと明かしたところで、ある疑問の問いに答えてもらいたいと息子たちに持ちかけ、それは直接聞かせてもらうと言い出した。
そして今は自宅にいること、そこに天才の血を受け継いだ末娘と悪女と変態科学者の姿もあったのだった。




































