14話
天井に大量出現したブロブ。
先行部隊はパニックに陥りそうになりながらも、どこから出てきたのか周囲を見回した。
すると、いつからあったのかゴブリン程度の小さなものだけ通れそうな坑道があるのが分かった。
そこからブロブが湧き水のように出てきていた。
大剣使いはゴブリンの通り道にも思えるその坑道をどうすべきか考えた。
攻めるには狭すぎる。
穴を塞ぐのもブロブを片付けるのにも、時間がかかる。
そうこうしているうちに、ロックイーターに襲われればひとたまりもない。
その時、仲間の一人がおそらく逆だろうと言い出した。
ブロブはロックイーターに追われて出てきたのではなく、ロックイーターに足止めされた冒険者を狙って出て来たのだろうと。
この洞窟に潜むモンスターは、自分たちを狙う冒険者を逆に狙って餌にしようとしていた。
しかし聖騎士は一切怯まずに、勇ましく剣を振った。
モンスターがどう考えていようと、殺される前に殺せば済む話だと叫び、自らも含めて士気を上げるために大声を出した。

およそ聖なる騎士とは思えない筋肉バカな発言に大剣使いは呆れながらも、彼女のいうことも道理だと思い、壁に這うブロブを叩き潰した。
大剣使いは自分たちだけでブロブとロックイーターを退治することに決め、見習い僧侶の少女に付与を頼み、同じく槍使いも魔女に頼んだ。
僧侶は呪文を唱え、大剣に着火の付与を。
魔女もスラスラと呪文を唱え、槍の切っ先に火を付加した。

聖騎士は自ら呪文を唱えて、鋭い剣に祝福を施して眩い光を纏わせた。
3人はロックイーターに立ち向かう準備を整え、戦闘体勢を取った。
大剣使いは他の冒険者たちにブロブを近づかせないよう指示を出す。
ロックイーターに仲間のハーフエルフを食い殺された戦士はしかしブロブ退治には加わらず、3人の後ろで剣を構えていた。
手は震えて仕方なかったが、ハーフエルフとの出会いや笑顔を思い出し、必ず仇を取ってやると気合を入れ直し、自分を奮い立たせていた。
後頭部に不意打ちを食らった彼は、無様に地面に倒れていた。
自分が倒したゴブリンの近くで激しい雨に打たれ、彼を仕留めたと思っているゴブリンは勝鬨をあげて踊り狂っていた。

どうにか彼は意識を取り戻し、ゆっくりと身体を起こしていった。
息を整え、顔を上げると、自分を襲った石が見えた。
雨に煙る柵の方に不意打ちを食らわせたゴブリンがいるのも気づき、兜に救われた幸運を思う。
脳震盪でも起こしたのか、それほどでもないのか、立ち上がると軽くふらついたが、大きく息を吐きながらしっかり足に力を込めて踏ん張った。
ゴブリンはもう一発食らわせようと石をセットするが取り落とす。
もたもたしているうちに彼が近づき、殺意を漲らせた鋭い眼光に射抜かれた。

ゴブリンは無様に逃げ出し、侵入してきた柵の隙間に飛び込んだ。
下の横木に足を引っ掛けてすっ転び、ぬかるんだ地面にヘッドスライディングをかましてパニックに陥っていく。
彼はゆっくりでも一歩ずつ確実に追いかけ、柵を抜け、ゴブリンの真後ろまで追いついた。
しかし、それは小賢しいゴブリンに誘導されただけだった。
無様にこけたゴブリンがニヤッといやらしく笑った直後、雷雨の闇から生まれたようにもう一体が現れ、剣を振り下ろしてきた。
彼も反射的に剣で受け止めた。
そして、二つの剣は真っ二つに折れた。
刃毀れしていた剣が折れるのも仕方ないと彼が冷静に考えた直後、更に後ろにもう一体いるのが分かった。
そいつは剣ではなく、弓矢を構えていた。
兜の隙間を狙い放たれた矢。
スローモーションで過ぎる一瞬の攻防は、彼が首を捻って躱すことで切り抜けた。
かに思われたが、弓矢を持った一体の後ろに棍棒を振り上げた三体目が潜んでいた。
剣を折られ、矢を避けて体勢を崩した彼は棍棒の一撃をまともに頭に食らわされてしまった。
いくら兜があるとはいえ、無防備な状態での渾身の一撃の衝撃は凄まじく、彼はまた地面に叩き伏せられてしまった。
投石の不意打ちよりもダメージは激しく、立ち上がれないところを背中に追撃を食らわされていく。
他の二体も棍棒を握り締めてボコボコにし始め、彼は痛みに呻くだけで反撃しようにもできなかった。
そして三体同時に振り下ろされた一撃で背中が反り、指先からも力が抜けていった。

敵討ちを誓った戦士は集中力を維持し、突然の襲撃に対応できるよう身構えていた。
しかし、前ばかり見ていたせいで頭上の注意を怠り、あっさりとブロブの落下に対応し切れず、切り裂いて飛び散った欠片が兜に張り付き、溶かされ始めた。
大剣使いに注意されて慌てて兜を脱ぎ捨て、最悪の事態は回避できた。
醜く死ぬのは避けられたが、また頭上から一番の脅威が迫っていた。
ハーフエルフを食い殺したロックイーターが大口を開け、戦士を飲み込もうとしていた。




































