15話
雷鳴が轟き、雨が激しく彼の背中を打つ。
倒れた彼はわらわらと群がってくるゴブリンが嗤っているのが聞こえていたが、痛みは体の自由を奪い、殺意をぶつけることができない。
自分がここで殺されれば、奴らが村で何をするのか嫌と言うほど分かっていたが、やはり体が言うことを聞かなかった。
自分を犠牲にしてゴブリンから隠してくれた姉は最後に、いつもと変わらない優しい笑顔を見せてくれた。
それを思い出した直後、斧の一撃が背中に振り下ろされた。

不幸中の幸いにも、切れ味の悪い斧は柔らかい革鎧を突き破ることはなかったが、肉に食い込み、骨を軋ませるには十分だった。
その一撃に歓声をあげるゴブリンは、何体かが柵の隙間から村に入ろうとしていく。
斧の一撃でゴブリンが満足するはずもなく、もう一撃が背中に振り下ろされ、もう一撃叩き込もうとしたが、雨に濡れた手から柄がすっぽ抜けて飛んでいき、それが他のゴブリンの嘲笑の的になる。
斧の一匹が探しに行っても、他のゴブリンが棍棒を握り締め彼の背中を執拗に殴り続ける。
まだ痛みを感じ、しっかり意識を保っていた彼は、すぐ近くに落ちている自分の剣が使い物にならないことだけを確認した。
未だ何もできずにいいように殴られ続けていると、今度は一体では持ち切れないでかい棍棒を持ってこられた。
小賢しい知恵を働かせたゴブリンは協力して巨大な棍棒を持ち上げる。
いやらしく煽り立てるゴブリンの声を聞きながら、彼は迫りくる棍棒を見つめ、あれを頭に食らえばひとたまりもないだろうことを理解し、すぐに自分が死ぬと悟った。
今のこの追い詰められた状況は、村が襲われた時に一人で逃げ出し、あっさり見つかって殺されかけた時と重なった。
これが走馬灯だとしても、師匠が教えてくれたのは最後まで考え続けろということだけ。
自分が何もせず、何もできずに、姉が陵辱されて姉でなくなるのを見ているだけだった時から、ゴブリンが人間の営みを壊す存在だと知った。

ここを突破されればあの少女たちは姉と同じ目に遭い、町に向かわれれば牛飼娘や受付嬢が陵辱され、冒険者たちは八つ裂きにされてしまうかも知れない。
自分が特別でもなんでもなくとも、ゴブリンの暴挙を見逃す理由にはならない。
しかし、兜の角を掴まれて顔を上げられ、棍棒が当たりやすくされてしまう。
そうして視線を強制的に上げられたその時、一体の腰に見覚えのある鷲の柄頭をした短剣が見えた。
それは父の形見で、姉がくれたものだった。

あの時姉は、ここを動いては駄目だと言っていたが、今の彼にそれを守る必要も余裕もなかった。
ここで自分が死んでも村が滅んでも、世界に大した影響はない。
そんなことは関係なく力を振り絞って立ち上がり、形見の短剣を奪い返し、殺意を纏わせた。
相手が立ち上がることなど予想していなかったゴブリンは慌てふためき、棍棒を落とした。
連携も咄嗟の対処もできなくなったゴブリンはパニックに陥り、彼は先頭の一体に剣を突き立てた。
何事かを喚き散らすゴブリン。
しつこく角を掴んでいるゴブリンはただ掴むだけで何もしてこないが、非常に邪魔くさいのは変わらず、彼は拾った棍棒で手首を叩きつけた。
それでも角を離さずに、折った。

角を折り取った奴の顔面に棍棒を叩きつけ、止めを刺した。
顔面をひしゃげさせてぬかるんだ地面に伏したそいつから角を奪い返し、果敢にナイフで襲ってくる一体を迎え、角も武器にして喉笛に突き刺した。
すかさず背後からまた斧を振り下ろしてくる奴がいた。
それは対処しきれずにまともに食らわされてしまったが、生と復讐の本能でアドレナリンが分泌されている彼は地面に倒れず、なんとか踏ん張り続けた。
喉から血を吹き出す目の前の奴のナイフを奪い、裏拳を振りかぶる勢いで斧の横っ面に突き刺した。

残りは一体。
武器を持っていないそいつは我が身可愛さで一目散に逃げ出す。
彼は自分を殺しかけた斧を拾って振りかぶり、しっかりと狙いを定めて投げた。
雨を弾きながら飛んでいく斧はゴブリンの後頭部にめり込み、醜いゴブリンを15体まで仕留めることができた。
感想
ゴブリンスレイヤー外伝13話14話15話でした。
同時進行なのでちょっとずつしか進みませんが、両方ともかなり厳しそうな状況に追い込まれてきました。
ゴブリンの連携がジェットストリームアタックにしか見えなかったですが、さすがの彼もアムロのようにすり抜けて返り討ちにすることはできなかったですね。
ともあれ、姉の笑顔と無残な最期を思い出して気合で切り抜けましたね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/50607



































