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90話

場所は名古屋港海浜資料館。

時は夕暮れ時。

 

 

職員も客もいない施設の中では、乱れた呼吸音が響いている。

 

ガラスの銃痕と血が垂れ流れた痕。

床には血まみれの誰かが引きずられた痕が長く続いている。

 

その終着点に銃を握って倒れている誰かがいて、西日を背にした真希が何者かに銃口を向けられていた。

 

そして泣きじゃくる真希に、引き金が引かれた

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

 

これより40時間前、水野を始末した千歌たちの輪から離れた堂島姉妹。

 

人格が元通りになっていた真希は、明日にはネイビスに行けると喜んでいたが、瀬里が2日はかかると訂正した。

 

それはそれとして、ネイビスは常夏の小さな島国で、きっと二人でも楽しく暮らしていけると補足した。

 

真希も楽しみにしていたが、そこに父親がいないことを少なからず寂しく感じていた。

 

それを敏感に察知した瀬里は、いずれ会いに来てくれると励まし、妹に笑顔を取り戻させた。

だから、脱獄計画は絶対に失敗するわけにはいかなかった。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

当初の計画は途中で逃げて名古屋まで隠れているつもりだったが、毒薬を盛られたとあっては無視できず、まず女医から解毒剤を奪う必要が出て来た。

 

真希は女医も言っていたように、解毒剤は羽黒に戻らないとないと思っていたが、瀬里は女医が持ち込んでいる確信があった。

 

真希は姉がそう言うならと素直に信じるが、気弱な通常時に戻った今、女医を脅すのを不安に思い、他の仲間にも手伝ってもらいたいと言い出す。

 

しかし、ネイビスに飛べるパスポートは二つしかないので、他のメデューサたちに奪われる可能性を考慮しなければならないんだと瀬里は言い聞かせた。

 

いくら同じ釜の飯を食った関係とは言え、相手は皆世間を震撼させた殺人鬼。

信じるべきは自分たちだけだと言い聞かせた。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

瀬里は真希を助けるためなら、殺人鬼を超えた鬼になる覚悟もできていた。

 

 

しかし真希は、それが瀬里の本心ではないと感じていた。

 

女医を脅すなら治療を受けに行ったタイミングでできたのにそうせず、霧子たちを助けに行くのを優先したのは少なからず仲間意識を感じているからだと思ったが、そこは指摘しなかった。

 

 

 

その頃、メデューサ全員に船を爆破する予定が伝えられていた。

 

海保のヘリ到着まで30分。

近くに停泊している羽黒のクルーザーに乗り込み、爆発に巻き込まれない場所まで離れるのに20分。

 

あまり余裕がない状況にすぐ次の行動を千歌が訊くと、女医は吾妻の部屋に集合後、武器の回収と洋子のサポートを指示した。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

 

メデューサたちへの指示を終えた女医が高木にデータのバックアップと羽黒サーバーへのアップを指示した後、瀬里が緊急事態な風に装ってドアをノックした。

 

まさかこのタイミングで反逆されるなど予想していなかった女医は無防備に迎え入れ、あっさり銃口を突きつけられた。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

異変に気付いた吾妻は銃を握るが、真希の方が早く銃口を向けて手放させた。

 

解毒剤を出せと言われても女医は取り乱さず、羽黒に戻らなければないと説明する。

 

しかし瀬里は信用せずに頭を殴り、船に解毒剤を持ち込んでいなければおかしい道理を説いた。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

もう一つ使っていた部屋に案内しろと言われた女医は素直に認めて歩き出すが、それでも解毒剤があるとは言わない。

 

そして洋子の視線に気づいた瀬里が振り返って話かけると、洋子は別に女医の肩を持つ気はないと前置きしてから、自分たちはいつになってもどこにいても殺人鬼なのは変わらないと諭した。

 

自分の意思ではなくても、人殺しに逃げる場所なんてないのだと。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年20号

 

 

瀬里は鼻で笑い、再び前を向いた。

 

ネイビスがきっと平穏に暮らせる安住の地だと信じ、そこまで逃げる決意をより強くしたのだった。

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