229話
遠慮なくぶん殴られたもみあげだったがダメージはそれほどではなく、またアジア人への差別意識をこれでもかと発揮して罵り、胸倉を掴んできた。
人種差別と新参者へのいじめ根性が根深いもみあげの怒号は厨房内にも響いてルイの耳にも届き、先輩コックが荒ぶるもみあげことベンが後輩イジメをしていると思い、声をかけた。
だが梶田から殴り掛かったと知り、梶田だけ一旦連れて行かれてしまうのだった。
翌日、梶田が出勤していないのに気づいたルイが傍の同僚に訊いてみると、三日間の謹慎を言い渡されたことを知った。
その日の夜、遅くに帰ってきたダニエラが同僚に聞いた話により、ルイは昨日の喧嘩の理由が自分だと教えてもらった。

白人には尻軽い日本人女のルイに対してゲスい算段を企てているのを聞いた梶田が怒り、手を出した。
ダニエラからすれば、元々胸糞悪い二人にガツンとやってくれた梶田には感謝したい気持ちだったが、日本人という括りで見られていることを実感し、衝撃を受けた。
新鮮な反応を見えるルイへの庇護欲を掻き立てられたダニエラはギュッと抱きしめ、これがこの国から消えない偏見と差別だと言い聞かせた。
メキシコ人のダニエラもこの国にやって来た当初は自分が差別や偏見の対象にされる経験をして思い知っていた。
それも、多人種で構成される大国だから様々な考えがあり、中にはどうしようもないクズもいると割り切れるようになったので、ルイには真に受けるなとアドバイスした。
ただルイは、初めて外国人として見られている現状を思い知り、戸惑いを強く感じている状態だった。
移民国家だからこそ差別や偏見がなくなるのは不可能に近いほど根付いているのを理解しているダニエラは、今後もジャパニーズやアジアンとしてバカにされるだろうが、そこでルイ個人の価値には何の関係もないことだと言い含め、予防線を張って励ました。

次の夜、ルイは梶田と一緒にブラッシュアップした新メニューを更に独自にアレンジを加えて完成させた。
それを屋上で黄昏ていた梶田に味見を頼むと、オレンジから柚子に変えたソースを絶賛してもらえた。
その流れで自分が原因で喧嘩したのを知ったことを打ち明けると、梶田はいつものクールな調子で、日本だろうがどこだろうが、料理の世界でも新人イジメをするようなクズがいるのを知っていると、実感を込めて明かした。

とは言え、海外研修にルイを誘った責任を感じている梶田は、努力し続けてメキメキと成長している料理人ではなく、性の対象だけの日本人女として見られるのは許せなかったともいう。
だがルイはそれを否定した。
誘われたのはきっかけに過ぎず、偏見と差別が蔓延るこの地に来ることを決めたのは自分だと。

そして自分のことで怒ってくれたお礼を伝え、これから嫌なことがまたあったとしても、お互い負けずに頑張っていこうと手を差しだした。
意外と綺麗な星空の下、ライバル宣言もされた梶田は、恋人と別れて塞ぎ込んでいた様子の彼女が思った以上に強いことを知り、安心すると共に惚れ直した。
そして、切磋琢磨できるライバルと握手を交わしたのだった。
一方日本のアパートの一室では、義姉弟で元恋人同士の二人が一緒にいて見つめ合っていた。
ただ夏生の方は、勝手に同居すると言われて戸惑いの中にいた。

感想
ドメスティックな彼女227話228話229話でした。
夏生にまだ気持ちが残っているならすぐ他の男に靡いたりはしないと思いますが、逆に落ち込んでいる今だからこそ、誰かに縋りたくもなるもの。
梶田は胸糞悪い社会をそこそこ経験しているからこそ、若いのに溢れ出る恋愛感情だけで突っ走らないタイプでしたね。
さて、陽菜はヨリを戻す方向に動き始めるつもりなのか?
https://www.kuroneko0920.com/archives/58667



































