36話
舞いが終わって一息ついた女神官は、神官長に祝詞を褒められて笑顔を見せた。
直後、託宣が女神官に降り注いだ。
その場にいた誰もが理屈を超えた奇跡を目の当たりにし、女神官はすべきことのために神官長を見た。

瞬時に察した神官長が快く送り出すと、女神官ははためく装束のまま駆け出した。
襲撃者を辛くも返り討ちにした彼は、事切れたそれの顔を検めた。
受付嬢の位置から見えたそいつの顔は黒く、エルフでありながら混沌に与し、邪悪な者が多いと聞くダークエルフのようだった。
ただ高身長であるはずのダークエルフではなく、低身長のそいつはいつぞやの昇級審査で不正を働き逆恨みで殺意を漲らせたレーアだった。

受付嬢は危険な臭いを発した相手だとすぐ思い出したが、彼はその時だけでなく、ここ最近、酒場やギルドで睨まれたのを覚えていた。
個人的な逆恨みだけなら、わざわざ扮装をして今である必要がない。
やはりゴブリンの影を感じた彼はすぐ気を引き締め直し、受付嬢に立てるか訊ねて気遣った。
だから彼女も椅子を支えに立ち上がり、彼の邪魔にならないよう大丈夫だと答えた。
この場の後始末を頼まれた受付嬢が彼の武運を祈ると、彼は背中と一言で答え、再び祭りの街中に飛び出した。

彼が走り抜けていくと、多くの冒険者がゴブリンスレイヤーだと気づき、ゴブリンと銀等級を結び付け、それぞれの反応を見せる。
やがて女神官が託宣に導かれて彼に合流すると、程なくエルフたちにも行き会った。

類稀な聴力で酒場の会話が聞こえていたエルフは、事が起こる前に根回しをしてパーティーメンバーを集めていたのだ。
そこで彼が慌てて走っている理由に、ゴブリン以外の何があろうという話になる。
頼られる前に先んじて自分から協力の意思を示したエルフは、相変わらず冒険の何たるかを教えたいがために、全員で冒険一回を報酬に要求した。
それでも、彼の返事も相変わらず「そうか」の一言なのが悔しくて、もっとオーバーリアクションをせっついた。
ただ彼が一言感謝をしてくれればそれで満足でき、最後は女神官の言葉で絆を確かめ合えた。




































