咽び泣くターニャに瘴気からの回復例はないか訊ねるが、彼女は首を横に振った。
結局、人里離れた一家の危機を救っただけでは、瘴気の治療法が分からなかった。
稜線から太陽が顔を覗かせた頃、ターニャは岩の前に花を手向けて目に涙を浮かべていた。
結局助からなかった母が眠るそこで、言葉にならない悲しみに暮れていると、謝る必要のないアルクが助けられなかったことを詫びてきた。
ヒーローのように颯爽と現れたアルクに感謝と恋慕の情を抱いた少女は、マフラーまで巻かれて満足に言葉が出てこなかった。

少女の心を奪ったことを知ってか知らずか、アルクは必要以上に慰めようとはせず、周囲の様子を見てくると言ってその場を離れた。
ウェンヌの気配を感じたターニャは、疑問に思ったことを素直に訊ねた。
あの方は誰ですか?と。
おいそれと身分を明かせないことを理解しているウェンヌは、今言える精一杯の答えを返した。
立派な方です、と。
女性陣からの評価を高めているアルクは、ザクザクと雪の上を歩いて山脈が見渡せる突端まで行き、これより北に一体何があるのだろうと思いを馳せた。
直後、駆けてくる足音が近づいてくると、木々の間から一人の女性が飛び出してきた。
涙を流して助けを求める彼女は、新たなトラブルを運んでくる気配を放っていた。

一方、遺跡に踏み込んだセリーヌとジョアンナは下層への入口を探して、辺りを調べていた。
あの眩く幻想的な光を頼りにあちこち見て回っていたその時、ジョアンナの目の前で壁が崩れ、下層への階段が現れた。
マップに記されている通りに下層への階段が見つかったのはいいが、最深部には石化が毒攻撃を使ってくる恐ろしいモンスターのコカトリスがいる。
セリーヌは賢明に、回復役のいない自分たちでは危ないと思った。

それはジョアンナも同意見で、マップをしゅるっとしまうと、またこの辺りで経験値と魔石稼ぎに勤しもうと答えた。
その時、敏感なジョアンナの耳は何かをキャッチした。
静かに耳を澄ませると、階段の先から助けを求める声が響いていた。
セリーヌも確かに聞き取ったそれは、確かに階段の先から発せられた人間の声だった。
正義感も強いらしいジョアンナが猪突猛進に坂を滑り降り、奥へ奥へと突き進んでいくので、セリーヌも慌てて後を追いかけるしかなかった。
狭い下層への道を抜けると広い空間に出た。
そこで男二人がふわふわ浮かぶ骸骨戦士二体に襲撃され、情けなくも泣き喚いて助けを求めていた。
ジョアンナは臆さずすぐに魔力をこね、セリーヌに一体任せたと言いながら先制攻撃を繰り出そうとする。

すると、剣を持った方の骸骨がジョアンナに狙いを定めて、殺られる前に殺るとばかりに襲いかかり、詠唱を中断させた。
ギリギリで振り下ろされた剣を避けれたジョアンナだが、尻餅から立ち上がるより先に追撃が振り下ろされた。
それはセリーヌが間に入り、何とか受けて守った。

しかし相当なパワーにいなし切れず、弾かれて大きく後ろに吹き飛ばされた。
セリーヌはうまく着地を決めたが、その隙を狙って弓使いの方が魔力を込めた矢を放った。
すると今度は、ジョアンナが水の刃で相殺してセリーヌを助けた。

今までのモンスターとは明らかにレベルが違う相手だが、セリーヌはワクワクを隠せないように二ヤリと笑った。
なんせ相手は、人間と変わらず戦闘において知恵を働かせていたのだから。



































