7話後編
三下を救えなかったことで、熱い使命感に燃えていた睦美。
洗濯し終わった服を持ってきた仲宗根は一人で責任を背負い過ぎていることを心配するが、新たな依存の対象にした青山は睦美は強いから大丈夫だと言い争う。
そんな二人に目もくれず、睦美は忌避剤を肌に塗り込んでいくと、残りを千歳に託し蝉が激しく鳴き続ける外に出て行った。
誰も止めることはできなかったが、無雲と甲斐と犬が同行を申し出、ありがたく受け入れたのだった。

午前11時。
時折上空を仰ぎ見てヤンマの行動を観察した睦美は、やはり散漫な巡回行動から、まだ先に進むかどうかの同意を二人に求めた。
ヤンマの視界は360度以上あり、比較的見にくい下部を補うために身体を振って角度を変えるものだが、上空に見えるヤンマはその行動を取っていない。
おそらくクマゼミの姦しい鳴き声を嫌っているためで、今のうちなら木陰に身を潜めるだけで見つかる確率がかなり下がると説明した睦美。
明るいうちに着ければライトを点ける危険を冒さなくて済むので、二人は睦美の判断に委ねるだけだった。
そこで睦美は双眼鏡で確実に観察しようとしたその時、とんでもないミスに気づいた。
肌身離さなかった大切なゴマ夫リュックを忘れてきてしまっていたのだが、最善を期するより効率を優先し、自分の判断に焦りを募らせてしまう。

そして居残り組の千歳は睦美がゴマ夫リュックを忘れていることに気づき、心配を募らせていた。
午後4時。
危険な目に遭うことなく無事に基地局に辿り着いた睦美たちだが、より山の上の方に来たからか、蝉の鳴き声が更に大きくなっていた。
つまり蝉も異常な大音量を出せるほど巨大化している可能性が高かった。
そして中の機材を検めてみたところ、問題なく作動しているようでここに原因は見当たらなかった。
無雲によればこの島まで海底ケーブルは敷かれておらず、山頂のアンテナでケーブルが届いている隣の島と繋がっているのだそう。
だとしたら、山頂のアンテナに不具合が起こっているはずだった。

アンテナに向かって山中を進んでいった頃には、松明を燃やすほど暗くなっていた。
松明の明かり程度ではカブトムシは集まって来ず、睦美は大丈夫だろうと思った矢先、蝉の鳴き声がクマゼミからアブラゼミに一瞬にして変わった。
鼓膜が破れそうなほどの轟音。
夜に鳴かないはずの蝉。
アブラゼミも夜に鳴かない種類のはずだった。
蝉の基本常識に収まらない状況に陥った直後、突風を起こしながらアブラゼミが姿を現した。

松明に引かれてやって来た蝉を見て、睦美は自分の判断ミスが招いた事態だと思ったが、どこでどの判断を間違ったのかすぐには分からなかった。
まだ本気で鳴いていないアブラゼミが共鳴室を使って本気で鳴き、このサイズから繰り出される音波を食らえば即死する可能性があった。



































