14話前編
栗原の彼に対する好感度はマイナス30を示し、それは嫌悪感を感じるレベルだった。
それでも彼をホテルの部屋に招いた栗原は、少し準備を済ませてから彼を招き入れた。
完全に誘惑して落とすつもりらしい栗原はスケスケランジェリーに着替え、惜しみなく色仕掛けを繰り出した。

彼はたじろぎながらも引くわけにはいかず席に着き、勧められるまま赤が入ったグラスを合わせた。
さっそく自分から用件を切り出した栗原は、自社拡大のために亀井会長の顧問税理士である彼に口利きをして欲しいと頼んだ。
今度は税理士という肩書を信じた栗原は融資がもらえた時に、情報でお礼をすると持ちかける。
さすがに彼も即答できないでいると、栗原はまたたわわな胸の感触を確かめさせるともに期待を抱かせた。

知り合うと言うことはつまり、身体の相性を確かめるということ。
そんな風にしか聞こえない態度、声音、表情、格好で上機嫌な栗原は生まれ年のワインを注ぎに席を立つ。
彼は栗原の真意を図りかね、もしかしたら本気で言っているのかも知れない可能性も考えた。
もちろん人脈は遠慮なく利用してしゃぶり尽くすことしか考えていない栗原は、ありがちな方法として彼のグラスに薬を混ぜた。

一杯4千円、特別に封を開けた。
男のスケベ心を巧みに刺激しながら差し出された、トラップワイン。
彼はそれを手に取り口に近づけようとしたが、手を滑らせてテーブルにぶちまけてしまった。
騙してくるならそれに乗りつつ、仕掛け返す。
同じく演技派な彼も慌てふためき謝り、まず紳士的に栗原の服を気にしてハンカチを差し出した。
上流階級と人脈を作るためにいいモノに関しての知識もあった栗原はそのハンカチの刺繍から高級品だと気づいて目を見開いた。
会長からの貰い物だというそれを惜しみなくプレゼントしてくれると聞けば、圧倒的金の匂いを嗅ぎ取り、ワインを零されたことなどどうでもよくなった。

だが彼はあえて栗原のプライドを傷つけるため、高級ハンカチに目の色を変え、高くもないワインの値段をいやらしく言う辺り、庶民的だと煽った。
成り上がり志向が強い栗原は一発で頭に血が上り、あっさり表情に怒りを滲ませながらも笑顔で取り繕い、すぐ美人局用に待機させていた喧嘩自慢の男に踏み込んでくるよう連絡を入れた。
そして彼の背中にしな垂れかかり、修羅場演出の準備を整えた。




































