150話
仁科の記憶は中途半端に戻っただけだったが、強硬策として、嫉妬深い神を殺せる剣が、ここより北方のカルンナッハにあると魔女はいう。
仁科を確かに殺せる選択肢に彼は青ざめるが、ユーマは構わずどうするつもりだと訊くので、彼はあくまで呪いの詳細が分かるまでは殺せないと答えた。
直後、ユーマは彼を大剣でぶん殴った。

合理的な呪い解除に彼が協力的でないと分かったならもう用済みなので、ルーミに仁科と彼を拘束しろと指示を出した。
しかしもう、肉欲だけじゃなく彼が生きる意味になっているルーミは剣に手をかけ、忠告を無視して躊躇いなく抜いた。
殺すと言ったのに抜かれちゃったら返り討ちにするしかなく、ユーマはシンプルに罵倒して迎え討った。

桁違いの強さの上司に立ち向かうルーミはあっさり剣を弾き飛ばされると、遠心力を利用したフルスイングソードを彼と同じようにぶち込まれた。
一発KOされたルーミはワイン樽に突っ込み、芳しい赤に染められていく。
さすがに熱くなり過ぎただけの部下を殺しはしないユーマはまたバカと叱責してから、今度は仁科に正義の名の下に拘束させてもらうと突きつけた。
直後、魔女がワインを台無しにされたことにギャーギャー騒ぐので、ユーマはそれを無視して、今まで剣のことを黙っていた理由を問い詰めた。
だから魔女はこいつアホか?みたいに顔をしかめ、嫉妬深い神の居所も分からないうちに剣の存在だけ知っても無駄だろうと言い返し、ついでにカルンナッハの剣は男しか使えないので、彼の協力は必要不可欠だと教えてやった。

先走って彼をぶっ飛ばしたユーマは、どこまでいっても男が重要な役割を持つ世界に歯噛みした。
彼は迎賓館の部屋で目を覚ました。
不意打ちで食らった一発の痛みがすぐ走って顔を押さえたのも束の間、ちょこんと座っているトリスに声をかけられて驚くも、おっとりお嬢様風な雰囲気に目を見張る。

それはそれとしてぶん殴られたところまで思い出した彼が仁科とルーミの居所を訊くと、トリスはあなたを軟禁しているので落ち着いてと、落ち着けない返答をする。
なので彼は出て行こうとするが、トリスはまだまだおっとり、上位ガーディアンに敵うはずないでしょうと穏やかに脅す。
おっとりさが逆に怖い彼が素直にベッドに座ると、神殺しの剣が男しか使えないと教えてくれるので、ならばいきなりぶん殴るような奴らに協力する気はないし、こっちはこっちで仁科の記憶を取り戻す方法を探す道を進むと答えた。

そんな回りくどい方法を寿命的に待ってられないらしいトリスたちに交尾を提案し、彼女が上に立つ者として立派な考えを示すので、彼はもう素直に可愛いからヤリたいんだと伝えてみた。
そこまでストレートに求愛の意思を伝えられても、トリスは底の見えない黒い瞳を逸らさず、薄ら笑いながら再びの却下で跳ねのけた。

おっとりお嬢様風こそ古来より頑固なものだと相場は決まっているが、彼女は既に椅子をしとどに濡らしていた。



































