一瞬で興味が湧いたセリーヌが目を輝かせると、ここぞとばかりに声をかけてきた店主がランシア王国のダンジョンから見つかった宝剣だとセールストークをスタート。
勇ましいことで有名なランシア王国にも心惹かれたセリーヌがどんどんワクワクしてきたところで、店主は手袋をはめて宝剣を握り、雷属性がついていることを披露して更に貴重な一振りであることをアピール。
セリーヌはチラリと、ジョアンナが購入してくれることを期待せずにはいられなくなる。

さて、肝心のお値段を覗き込むように確認した二人は間違いなく一桁ずつ読み上げてみて、驚愕せずにはいられなかった。
なんと10万ダラだったのだ。
あまりの高さに打ちひしがれて店を出たジョアンナがさすがに買えないと漏らせば、セリーヌも納得して同意するお値段だった。
貴重な宝剣は手に入れられなかったが、他にも目当ての物があったジョアンナは魔女のパン屋さんみたいな看板がかかった店に入った。
大量の書物で埋め尽くされているこの店は魔法使い御用達の魔導書店だった。
セリーヌが物珍しそうに眺める中、ジョアンナはまずお店の猫を一撫でしてから迷いなく一つの棚に向かい、一冊の本を抜き取った。

宝剣に比べてお手頃過ぎる50ダラで購入できたお手軽魔導書で、一体どんな魔法が使えるようになるのか?
格安で手に入れた魔導書やその他たくさん買い込んだセリーヌとジョアンナ。
宿に入ってなんとも奇抜な部屋着に着替えたジョアンナは、買ったばかりの魔導書を編集が持ち込みの漫画をチェックするようにパラパラと捲っただけで準備完了と告げ、自信満々に笑みを零した。

えらくあっさりし過ぎでも、ジョアンナはこのくらい一度目を通せば十分なのだと鼻息荒く答え、灯りを消してくれるよう頼んだ。
そしてピッタリノースリーブニットのセリーヌがふっと蝋燭の火を吹き消した。
するとジョアンナは小さな杖の先から出した線香花火のような光の玉を操り、常人には聞き取るのも難しい呪文を唱えていく。
そうすると小さな玉がふわっと大きくなった。
幻想的な光にセリーヌは見惚れるが、言ってもこれは暗い道を照らす目的の初歩的な光魔法だった。

何を隠そう、魔法学校で水魔法系統は粗方マスターしたと豪語するジョアンナは、手足のように光を一しきり操った後、蝋燭の先っぽにぶつけて再び火を灯した。
水魔法に近い氷魔法を覚えたいジョアンナだったが、氷系統の魔導書はそこら辺に売ってるようなものじゃない。
だから、この街のダンジョンに氷の魔導書が眠っていると聞きつけ、探索仲間を探していたのだ。
ただその魔導書を含め、ダンジョンの最奥にはコカトリスという魔獣が守護者として立ち入る者を蹴散らそうとしてくるので、ジョアンナ一人では心許ない。
セリーヌも息を飲むコカトリスは、見た相手を石に変える恐ろしいモンスターなのだ。

もちろんセリーヌもそんな危険な場所に付き合うのだから、それなりの見返りを要求したところ、魔導書の類だけでなく、剣士なら喉から手が出るほど欲しい三大流派の一つ、覇山流の秘伝書があると言われ、それを信じて仲間になったのだった。
自分を見限ったアルク。
主君に対する忠誠だけではない想いを踏みにじられたセリーヌは、泣く子も黙る剣士として成り上がろうとしていた。




































