161話
駆けつけた晴輝の一発でメットは地に伏せた。
ながみんも駆けつけ、もう一本の腕の肘周りを切り裂き、一閃で腕を分断してみせた。
力任せに肉を裂くのではなく、関節の隙間を的確に斬った一撃で、メットは自分の体重を支えきれなくなった。

すかさず彼はメットの背中を駆け上り、神城から教えられた人体の急所の見切り方さえあれば恐るるに足らずとバカにし、まともに動けなくなったメットの後頭部に銃口をあてがった。
そしてかつてあれだけ苦戦したメットを雑魚呼ばわりしながら連射し、完全に止めを刺した。

たった一人で一気に事態を好転させた彼は、らぎ姉に山田からの返事を聞き、滞りなく進んでいるのを確かめると、まだ呆然としている避難者たちに呼びかけた。
海兵隊を全滅させた今、脱出を阻む者はいなくなった。
だからバスに乗り込めと促した。
そして勇気と希望を改めて注入するため、まさに英雄然として高い位置から鼓舞した。

そうするとさっきまで絶望を感じていた避難者たちは歓声と手を高く上げたのだった。
轟や磯波姉妹も彼のカリスマ性に安堵と興奮の眼差しを向けると、避難者たちはすぐに動き出したが、あまりの興奮で気ばかりが早って統制が取れなくなった。
バスがバスがと慌てる彼らを見かねた轟は気合の一喝で一瞬動きを止め、静かに指示に従って動けと諭した。
その流れで、奥の手を使われてしまったことを彼に詫びた。
彼は子供優先、特に赤ん坊は最優先し、その保護者も同様に乗せろと指示していく。
その指示通りに、赤ん坊を連れている磯波姉妹は男たちから先に乗るよう声をかけられた。
麗は妹が贔屓されたのだろうと思って、からかいの笑みを向けるが、きららはこれでもかと嬉しそうな笑顔で真っ当な隊長命令だと返し、ありがたくバスに乗ろうと促した。

そしてバスに向かう途中で彼の傍を通り、何気なく声をかけてお互い手をあげた。
後で会う約束を交わしながら手をパンと合わせると、すれ違った直後から彼は顔つきをすぐ切り替えた。

轟から奥の手を使われたことを詫びられた彼だが、メットに進化したのはあくまで実験の途中段階であり奥の手ではなく、モルモットに薬物を注入して変化を見ているだけだという。
ただ、可能な限り時間を稼いでくれた労はちゃんと労った。
そしてながみんの活躍にも感謝しようとしたが、彼女はまだ全然戦い足りていないようで、脱出が始まったことに不満を抱いていた。

彼は冷静に判断して無視し、轟が絶好調なのを聞くと、これだけハードに働いているのにいるのに疲れるどころかどんどん調子が良くなっている不思議の理由を訊ねてみた。
格闘家として意見を求められた轟は、戦争のような長期戦で好調を維持できる理由は分からなくても、後悔するような戦いじゃないことだけは同意を求めた。
それでもエネルギー補給だけちゃんとやろうと意見したその時、無視に耐えきれなくなったながみんが同じ質問を繰り返したのだった。

メットは倒されてしまったがやることはやったエリックは、自分の失敗を認めつつ、それでも避難者が全滅するのは変わらないと思い、呪詛の言葉を連呼した。
それに呪われたようなタイミングで、避難者の一人がまた異変を来した。
高木はエリックの失敗を少しでもマシな結果に導いてやった自分の行動を恩に着せて見下ろし、ただ手柄は譲ってやるという。
嘘が通じないあの人でも、その程度の思いやりなら知らんふりをしてくれるだろうからと。
そしてまた一人が苦しみ倒れ、ビクビクと保菌者になり始めた。
彼はメットの進化情報を取り入れたこれからの保菌者はより強大になっていくだろうと伝え、ながみんへの返事とした。
一方山田たちは、避難者全員がバスに乗り込んだことを報告し、随時出発しようとしていた。

感想
インフェクション159話160話161話でした。
さすがに赤ちゃんこと殺されはしないと思いますし、姉妹にはもう不幸な目に遭って欲しくないですね。
ただ、この窮地を救うのは一体誰になるのか…
https://www.kuroneko0920.com/archives/65880



































