77話
ついに彼を被検体にした特効薬開発の実験が始まった。
パンツ一丁で寝台に寝かされた彼にウイルスの結晶を打ち込むのは、モニター越しにマシンアームを操作するシン博士の役割だった。
姫に一言断ったシンが彼の肩口に針を突き刺し注入すると、まひるは兄の命懸けの姿に視線を逸らしたが、朱音は大丈夫だと励ました。
マリアは彼女らしく研究者の欲求を抑えきれずに興奮し、吃音もどこへやら饒舌に捲し立てる。

そしてアナスタシアは、彼が生きて実験が成功することをひたすら祈った。
一方、日本支部に囚われた人生を生きている美来。
三日月の綺麗な夜でも今まで通りの日常を過ごした美来は、おもむろに窓に息を吐きかけて曇らせ、幾度となく書いた彼の名前を漢字、平仮名、カタカナで書きつけた。
それを見つめるのも、もう何度したか分からない。

直後、静かに彼を想い続けるための儀式をぶち壊すドアが開く音が聞こえた。
さすがに乙女チックな行為を見られるのは恥ずかしい美来が慌てて消してから入って来たのは、食事を持ってきた麗亜だった。
まさか麗亜が運んでくるとは思っていなかった美来が驚くも、何でもないような感じでトレイを置き、この役目を与えてくれる協力者がいるのだと明かした。

そして思い出話を切り出し、あの日もこんな月だったわねと話し出した。
まだ誰がナンバーズの担当官になるか決まっておらず、その座を奪うための研修を受けていた頃のこと。
ある講義のとき、人類史上最も多く子供を作った男は誰か問われたことがあった。
当てられた寧々子はうろ覚えの知識で徳川13代の誰かだったようなと答えると、長官はドヤ顔で11代の家斉が16人を相手に53人を産ませたと説明すると、麗亜がここぞとばかりに不快感を示した。

エジプト王ラムセス2世は100人、ポーランド国王アウグスト2世は382人、更にその上には800人台、1,000人台といった超絶絶倫種付け漢もいたらしい。
まさに男の中の男が歴史上にいた話をした長官は、担当官の仕事はナンバーズに安心安全快適な環境を提供してメイティングさせまくり、目指せ1000人のつもりで希望ある男児を孕ませることだと説明した。


































