10話
ちょっとしたバスほどに巨大なカブトムシ。
睦美は山中で見たあの抜け殻の中身だと分かり、単なる巨大化現象を越えている事態に慄いた。
カブトムシは幼虫から蛹、蛹から成虫へと脱皮するとき、形を大幅に変える完全変態型で、その際に薄皮程度の外皮で済ませ、自衛のために蛹室を作る。

だから抜け殻は形を保たずボロボロになるのが当たり前なのだが、山中で見たものはくっきり成虫の形を残していた。
完全変態であるはずのカブトムシが、不完全変態型と同じように硬い抜け殻を残しているのは、非常に由々しき事態だった。
つまりこの島のカブトムシは、成虫になった後も脱皮して更に大きくなっていく性質を持っているということだった。

ただでさえ巨大なカブトムシが蛹室を作るにはかなりのスペースが必要で、例えば3mの身体なら倍の6mの深さを必要とする。
しかし、成虫になってから不完全変態で大きくなっていっているのであれば、蛹室を作る必要がない。
しかし睦美にしてみれば、カブトムシの異常な巨大化を含め、食物連鎖の頂点に昆虫が君臨していることが何よりも恐ろしかった。

ただ本能で動く昆虫に対し、自分たちには知恵があると考えた。
カブトムシが動けないセミを捕食している間に、安否が心配な千歳たちの元に急いだ。
カブトムシに遭遇した二人は、関節を狙って撃ったことで何とか退け、アンテナの応急処置も完了できていた。
すぐさま無雲が近隣の島の役所に電話をかけるが、繋がりはしたが深夜帯だからか誰も出てくれなかった。

もう間もなく夜明けの時間でもあることから、一旦社に戻り、無雲だけ隠れ家で身を隠し、役所に人が来る時間を見計らってもう一度電話をかけることにした。
そして社に戻る途中、どこかで銃声が轟いたのだった。
午前4時。
睦美たちが社に到着すると、撃たれた涼子が夥しい血を流して倒れており、他の二人が全裸にされて縛られ、葵が消えていたのだった。

事件は睦美たちが戻って来る20分前に発生していた。
京介と法嘩は無雲たちが連絡もなく戻って来ないことに焦り、苛立ち、我慢の限界を越えかけていた。
1時間で帰ってくるはずが20時間も経っていることで、もう自分たちで行動すべきだと結論を出し、葵を運ぼうと言い出し、それを止めたのが涼子だった。
しかし京介は銃口を向け、意地でも押し通そうとする。

すると真実が京介に銃口を向け、自分勝手な行動を止めさせようとした。
それをまた涼子が止めさせようと止めに入り、驚いた真実は引き金を引いてしまったのだ。
それは涼子が押し上げて天井に逸れたが、京介も反射的に引き金を引き、涼子を撃ってしまったのだ。

仲間になったはずの人を撃ってしまい、取り乱して思考がままならなくなった京介の代わりに法嘩が即座に行動に移し、真実から銃を奪うと刻に葵を背負わせ、社から飛び出していったのだった。
撃たれたにもかかわらず事故だと庇い、連れ戻してという涼子の言葉に胸打たれた睦美たちは、すぐに追いかけることにしたが、婆々を一人にはできないので居残り組を残して出発した。
朝日が昇り始めた明け方、山中を避けて野原を進んでいた京介たちは合図を出し、仲間たちと合流していた。
別行動していた仲間5人も、如何にも血生臭い雰囲気を纏った連中だった。

彼らは何とか動かせそうな漁船を見つけており、それに乗って島を離れるつもりだったが、幸先よく野生のバナナを見つけたので、まずは腹ごしらえをすることにした。
銘々もぎって野生のバナナの甘さに舌鼓を打ち、木の上から忍び寄る蟲に気づけなかった。
合流したばかりの坊主頭をグイッと持ち上げたのは、巨大カマキリだった。

感想
大巨蟲列島9話10話でした。
作戦は今のところ順調ですが、そう言えば約束の時間が大幅に過ぎていたんですね。
でも、武力で従わせたらもう仲間じゃないですね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/70434
https://www.kuroneko0920.com/archives/16417



































