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絡み合った愛と死

真珠が周防と出会った時、彼は熱中症で倒れている時だった。

 

看護学生だった真珠はすぐに処置をして救急車を呼んだが、彼はとても迷惑なのをがなり立てた。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

ヤバい状態だと認めたくないお花畑なのか、本当に静かに逝きたかったのか。

 

 

後日、お礼のために再び会った真珠はストレートに死にたい願望があったのか訊ねると、彼はヘラヘラしながら否定した。

 

貧乏な苦学生と、それを不憫に思ったのか何かとご飯にでも誘うようになった危なっかしい男。

 

徐々に距離は縮まっても家には行かせてもらえず、その原因が粘着愛の妹だと分かったのは後のこと。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

ペットの話。

妹の話。

好きだった元同級生と同窓会で再会して婚約者になった彼女の話。

 

プロポーズが成功して人生の春が訪れた心地だった周防は平凡で幸せな未来を描き、邪魔な妹には身体が悪い母の面倒を一生見させるつもりだったような、そんな最低のクズだと真珠は知っていた。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

沙菜にとっては衝撃の言葉だが、逆上させようとする真珠の嘘八百の煽りだと感じた。

 

しかし狂気の殺人鬼である真珠が思うに、人を殺すなど普段からある程度の暴力性を発揮していないととても一線を超えることなどできず、そもそも周防は地顔が柔和なだけで優しい人ではなかったという。

 

表の顔は常識人ぶって尤もらしい言葉を吐き出すが、単なる右に倣えのおためごかし。

 

しかも妹のせいで結婚が破断になっても、それはそれで良かったと言い切れるメンタルの持ち主だった。

 

確かに彼女は大好きだったろうが、結婚していざ子供が産まれれば人生のレールはほぼ決まったようなもの、彼は何かに縛られる怖さを、結婚話が進むことによって改めて思い知ったのだった。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

それが良い人なのか悪い人なのか、善か悪か、正直者と取るのか嫌な奴と取るのか、個人の価値観でしかない。

 

しかしペットを飼うのは人に比べて短命で責任を持つ期間が比較的短いからいいのだと考える人間はやはり、優しさとは程遠い感性なのは間違いない。

 

だから周防家の老犬が死ぬ前に殺してやったと更に煽る真珠だが、それはあくまで周防がベタ惚れに値するような男ではないと、目を覚まさせてやるためだった。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

代わりにアラタの方が本当に優しく、人殺しでもそのまま信じてくれる他に類を見ない男だと。

 

 

そうして愛する兄を貶められ、代わりにアラタを勧められた沙菜。

 

しかし沙菜は同じ女として、真珠は実は本当に周防を愛してしまったから、その本音を自分でも気づかせないようにするため、自分自身に言い聞かせているだけではないのかと察した。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

真珠はかつて、周防に何度も死にたいんじゃないのかと訊いた。

 

その度に返ってくる言葉は違っていき、でも死ねない後ろ向きなものばかり。

 

そうやって真珠が何度もしつこく訊いたのは、死ねない理由じゃなく生きてる理由を知りたかったのだが、ついぞ彼から求めていた言葉を聞けなかった。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

君のせいで死ねなかったではなく、君がいるから生きている。

 

そう言って欲しかったはずの真珠の本音を沙菜が炙り出そうとした瞬間、アラタは窓ガラスをぶち破ってまさに殴り込み、人殺し嫁が気づくのを邪魔したのだった。

 

 

複雑に絡み合った好意。

 

自分自身の心を押し込めていた真珠の動揺をごまかし、アラタはさっさと連れ出そうとするが、沙菜は遺族として知りたいことを最後にぶつけた。

 

すると真珠がまた逆上させるような憎たらしい言葉を吐きつけるものだから、アラタはさすがに聞き捨てならずに遺族の悲しみをまるで考えないバカ女を殴ると、彼女は子供のように泣きじゃくるのだった。

夏目アラタの結婚
著者名:乃木坂太郎 引用元:夏目アラタの結婚10巻

 

 

憎たらしいにも程があるが真珠の善意でした犯行であり、周防が本当に生の呪縛から解き放たれたがっていたのを知っているから、息の根を止めたのは真珠の優しさだったのだ。

 

ほぼ全てが明るみになったところで真珠を連れ出し、車に乗せて走り出したアラタは、一人の少女が最悪の絶望に陥る前に楽にしてやるつもりだった…

 

 

感想

夏目アラタの結婚10巻でした。

やっとこさ真珠が罪を告白して大きく動き出したように見えますが、ここから一気に締めに向かっていくのみだと思うと寂しさが募ります。

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